100年続く桃源郷をめざして | 地域食材.miru

2019.07.08

100年続く桃源郷をめざして

地名からもわかる桃の一大産地、紀の川市桃山町。

無肥料減農薬で大切に作る桃。現在約6万
個を栽培するが、ジェラート用を潤沢に確
保するため、収穫量の増加が今後の課題だ

温暖な気候と上質な土壌が育む桃は、「あら川の桃」として不動のブランド力を誇る。
その桃山町で4周年を迎えた農園のジェラテリア「藤と うとうあん桃庵」は、
いまやシーズン外でも客足が途絶えない人気店に成長した。
桃農家が切り拓いた新たな道。そこにはどんな思いがあったのだろうか。

サラリーマンから農家6次産業までの道のり

 豊かな恵みをもたらす紀の川に沿って、桃畑が広がる桃山町。少し離れた住宅街の一角に、桃の直売とジェラートで知られる藤桃庵がたたずむ。店を切り盛りするのは、籔本畑下農園の籔本周也さんと妻の梓あずささん。
周也さんは、祖父の代から40年以上続く1・2ヘクタールの桃畑を13年前から手伝い始めた。当初は両親と同じように、会社勤めをしながら兼業で手伝う程度だったという。
 そんな中、転機が訪れる。パソコンやウェブに明るい梓さんが、新たな販路開拓のため、何気なく桃をオークションに出品した。当時はネットオークション全盛期。1円からスタートした桃が、気づけば3000円ほどで落札された。「需要があるなら」と何度か出品を続け、倉庫で直売も始めた。
 次に目指したのは、自社のオリジナルウェブサイトだ。梓さんは大阪まで勉強に通い、自力でウェブサイトを作り上げる。

紀の川沿いの桃畑は「ひと目十万本」といわれ、環境省のかおり風景100選にも選ばれている

インターネットを利用したオークションや直売といえば今でこそ珍しくないが、当時にしてみれば画期的だった。柔軟な発想と旺盛な好奇心が、後の事業にもつながっていく。
 直売だけでなく、桃のカップジェラートを商品化した。ところが、委託していた加工業者が高齢を理由に廃業すると決まり、「自分たちで作ってみないか」と声をかけられた。
「ジェラートはさすがに専門外」と二の足を踏んだが、2カ月考え抜いた末、梓さんは加工業者の熱意に根負け。主婦業から一転、イタリアで修業を積むと、ジェラート製造の技術を持ち帰った。

 ジェラートの人気は日に日に高まり、今では週末になると長蛇の列ができるほど。「決して機械任せではなく、配合が命」と梓さん。繊細な味を生み出す確かな味覚が、藤桃庵を支えている。

「いつかは無農薬の桃を」妥協なき作り手の思い

 「桃を作っているのは自分ではありません」と周也さん。「桃を作るのは桃の木。僕はお世話をさせてもらっているに過ぎません。木が自然にのびのびと育ち、いい桃をつけてくれることを願いながら」。収穫期を終えて葉が散り終わると、翌年に向けて剪定を始める。
 春になると摘蕾や袋掛けを施し、合間に1度ずつ薬剤と殺虫剤を撒く。理想は無農薬だが、畑ひとつをまるごと虫に食われた苦い経験がある。
「ここでしか食べられない、おいしくて安全な桃とジェラート」を目指し、無肥料減農薬のスタイルを貫く。農家だからこそ、収穫に適した瞬間を逃さず、桃のおいしさをジェラートに閉じ込められる。
 近年は桃だけでなく、季節ごとの地元のフルーツや牛乳を厳選している。ふたりが作る桃とジェラートに惚れ込み、茨城県からはるばると桃を買いにやってくる10年来の常連客もいるという。周也さんは桃に全力を注ぐため、藤桃庵のオープン2年目に勤め先を退職した。
 今でも無農薬の理想を捨てたわけではない。不可能といわれた無農薬リンゴの栽培に成功した青森のりんご農家の物語『奇跡のリンゴ』に感銘を受け、3本の木だけは無農薬で育て続けている。物語のように、いつかその3本が立派な実をつける日を夢に見て「木のお世話」を続けている。

桃や旬のフルーツのみずみずしさを、そのままジェラートに。人気ナンバー1は写真手前の「桃みるく」。かつらぎの木村牧場の牛乳で作ったミルクジェラートに、ゴロゴロと入った桃ソースの果実感がたまらない

「あら川の桃」を後世へ出会いを糧に挑み続ける

夫婦の二人三脚の挑戦を支えている言葉がある。「やると決めたら工夫が生まれる」。たとえば、4月に
開いた「桃花コンサート」もその一つだ。「満開の桃畑でコンサートを開きたい」と思い立ったのは2016年。地元出身のアーティストを招いた。
 初年度は電子ピアノを持ち込んだが、今年はクラウドファンディングで出資を募り、屋根付きのステージとクラシックピアノを運び込んで本格的なコンサートを開催。桃の花とピアノの音色が織りなす幻想的なひと時は、訪れた100人超の観客を魅了した。

籔本周也さんと妻の梓さん。ふたりの思いが詰まったジェラートは、一度食べれば病みつきに。「店に来られない人にも知ってもらいたい」と、時にはイベント出店も。6月3日には海南市の酒蔵でのイベントに出張予定

 費用を募ったとはいえ、予算は決して潤沢ではなかった。周也さんは「大人のでっかい遊び」と笑い飛ばすが、その裏には「100年続く桃源郷を残したい」との思いがある。ブランド桃の産地といえども、農家の高齢化と担い手不足は深刻な状況。桃山町と「あら川の桃」の名を広め、まちと桃農家を元気づけ、課題を解決できないかと考えたのだ。
「最近はいろんなお店が増えました。花と果実の時期以外も、桃山に足を運んでほしい」とふたりは声をそろえる。
 店のオープンや6次産業の申請、メニュー開発は、さまざまな人との縁で成しえてきた。「人に出会って、話して、自分の人生の目的に出合うのかなと最近思う」と周也さんは振り返る。「運が良かった」と話す、底抜けに明るいふたりの笑顔は「笑門来福」の言葉そのものだ。


藤桃庵 -TOUTOUAN
[住]紀の川市桃山町元901
[☎]0736-66-8475
[営]10:00〜17:00
[休]水
※臨時休業の場合あり
※1・2月は休業
https://www.toutouan.biz/

  • 食材名
  • 品 種
  • 品 目 果物, 果物(加工品)
  • 出荷時期 通年
  • 主な産地 和歌山県紀の川
  • 配送温度帯 冷蔵, チルド
  • 食べ方
  • 備 考

生産者のご紹介

籔本周也
  • 生産者名/フリガナ 籔本 周也 / YabumotoShuya
  • 会社名・団体名/フリガナ 籔本畑下農園 / ヤブモトハタシタノウエン
  • 電話番号 0736-66-8475
  • FAX番号 0736-66-1213
  • HP https://www.yabumotohatasita.com/
  • 主な生産物
  • バイヤーさんへ一言 自然栽培の桃を目指し、無肥料減農薬に挑戦し続けています。

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